覚王山とは。

名古屋市の中において独特の雰囲気を持つ覚王山の魅力をご紹介します。

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松坂屋初代社長の別荘 ― 揚輝荘の北園と聴松閣

松坂屋初代社長の別荘 ― 揚輝荘の北園と聴松閣

覚王山駅から北へ、住宅地の坂道を10分ほど歩いていくと、木立の奥にどっしりとした山荘風の洋館が現れます。揚輝荘(ようきそう)。松坂屋の初代社長が大正から昭和のはじめにかけて築いた別荘で、いまは名古屋市の施設として公開されています。覚王山を歩くなら、一度は立ち寄ってほしい場所です。

松坂屋を育てた伊藤次郎左衛門祐民

揚輝荘の主は、十五代伊藤次郎左衛門祐民(すけたみ)です。明治11年(1878年)、名古屋の商家・伊藤家に生まれました。江戸時代から続く「いとう呉服店」を明治43年(1910年)に株式会社にし、名古屋で初めてのデパート形式の店を栄に開いたのが祐民です。のちの松坂屋の礎を築いた人物で、名古屋商業会議所の会頭もつとめるなど、地元経済界の顔として活躍しました。

祐民は、自分で定めた55歳定年のルールにしたがい、昭和8年(1933年)に社長などの公職から退きます。その後は財団をつくって社会事業に取り組んだり、留学生を受け入れたりと、国際交流に力を注ぎました。狂言や茶道、絵画など趣味の幅も広く、昭和9年(1934年)には4か月かけてインドなどの仏跡をめぐる旅にも出ています。揚輝荘には、こうした祐民の人柄がそのまま表れています。

1万坪の丘にあった「迎賓館」

揚輝荘がつくられたのは、覚王山の丘陵地およそ1万坪。起伏のある地形を生かして池や庭が配され、いちばん多いときには30棟あまりの建物が並んでいたそうです。皇族や政治家、実業家、文化人が訪れ、園遊会や月見の会、茶会がたびたび開かれたほか、アジアからの留学生の寄宿舎にもなっていました。個人の別荘というより、名古屋の迎賓館のような存在だったのです。

「揚輝荘」という名前は、この地が月見の名所だったことにちなみ、陶淵明の作と伝わる漢詩の一節「秋月揚明輝(秋の月が明るい輝きを揚げる)」からとったといわれています。

戦時中の空襲や開発で、敷地や建物の多くは失われました。それでも主要な部分が残り、平成19年(2007年)に名古屋市へ寄附されます。翌平成20年(2008年)には、聴松閣、揚輝荘座敷、伴華楼、三賞亭、白雲橋の5棟が市の有形文化財に指定されました。

北園 ― 池をめぐる日本庭園

揚輝荘の敷地は、北園と南園に分かれています。北園は池のまわりを歩いて楽しむ池泉回遊式の庭園で、京都の修学院離宮の影響を受けたと考えられています。山桜、新緑、紅葉と、季節ごとに表情が変わるので、何度訪ねても新鮮です。北園の庭園は無料で入れます。

  • 白雲橋(はくうんきょう):屋根のついた廊下のような橋で、北庭園のシンボル。修学院離宮の千歳橋を模したといわれ、天井には龍の絵が描かれています(橋の上は立入禁止)
  • 伴華楼(ばんがろう):昭和4年(1929年)、建築家・鈴木禎次の設計。尾張徳川家ゆかりの座敷に洋室を組み合わせた建物です
  • 三賞亭(さんしょうてい):大正7年(1918年)に伊藤家の本宅から移された、揚輝荘で最初の建物。煎茶のための茶室です

南園 ― 異国の意匠がつまった聴松閣

南園の主役が、昭和12年(1937年)に迎賓館として建てられた聴松閣(ちょうしょうかく)です。木の骨組みを外に見せるハーフティンバーの外観は、まるでヨーロッパの山荘のよう。ところが中に入ると、英国風、中国風、インド風と、部屋ごとにがらりと趣が変わります。

なかでも見逃せないのが地下です。地階はインド様式でまとめられ、かつての舞踏場にはインド風のレリーフが残り、ホールにはインドからの留学生が描いた壁画があります。ほかの建物とつながっていたといわれる地下トンネルの入口も残っていて、探検気分で見て回れます。祐民がインドの旅で受けた感銘を、この館に込めたともいわれています。聴松閣は平成25年(2013年)に修復を終え、地下1階から2階までを公開しています。

南園の庭園は枯山水の石庭で、ふだんは自由に入れませんが、毎週水曜日と土曜日には、聴松閣の定時ガイドに続けてスタッフの案内で見学できます。

見学のポイント

聴松閣では、スタッフが館内を解説してくれる定時ガイドが毎日10時30分と14時の2回あります。所要時間は40〜45分ほど。建物の細かな意匠や祐民の逸話を聞きながら回ると、見え方がまったく違ってきます。1階には全盛期の揚輝荘を再現したジオラマや、庭を眺めながら休める喫茶室兼休憩室もあります。

聴松閣の観覧料は、一般450円、名古屋市内在住の65歳以上150円で、中学生以下は無料です(2026年10月1日に改定)。揚輝荘には駐車場がないので、地下鉄で来るのがおすすめです。

基本情報

名称揚輝荘(北園・南園/聴松閣)
住所〒464-0057 名古屋市千種区法王町2-5-17
アクセス地下鉄東山線「覚王山」駅1番出口から北へ徒歩約10分
開園時間9:30〜16:30
休み月曜日(祝日の場合はその直後の平日)、年末年始(12月29日〜1月3日)
料金北園:無料/聴松閣:一般・高校生・大学生 450円、市内在住65歳以上 150円、中学生以下無料(2026年10月1日に改定)。障害者手帳などをお持ちの方は無料
ガイド聴松閣定時ガイド 10:30/14:00(約40〜45分)。水・土曜日はガイド後に南庭園も案内
駐車場なし(近隣の有料駐車場を利用)
電話052-759-4450
公式サイト揚輝荘 公式ウェブサイト

時間や料金は変わることがあります。お出かけ前に公式サイトで最新の情報をご確認ください(2026年9月確認)。

参考