古川美術館を出て南へ1分ほど。門をくぐると、木々に囲まれた静かな数寄屋の邸宅が現れます。古川美術館の分館、爲三郎記念館です。美術館の創設者・古川爲三郎が暮らした家を、そのまま公開しています。庭を眺めながらお抹茶をいただける、覚王山・池下エリアでも指折りの「ひと休みの場所」です。
料理旅館の別館から、爲三郎の終の住まいへ
この建物が建てられたのは昭和9年(1934年)。もとは料理旅館「向陽館」の別館でした。昭和20年(1945年)に爲三郎が住まいとして買い取り、103歳で亡くなるまでここで暮らしました。「大好きなこの住まいを、みなさんの憩いの場に」という本人の願いを受けて、改修を経た平成7年(1995年)11月に記念館として開館しています。
平成25年(2013年)7月には名古屋市の「認定地域建造物資産」に認定され、平成30年(2018年)11月には、母屋の「爲春亭」や茶室「知足庵」をはじめとする6件の建物が国の登録有形文化財になりました。昭和初期の数寄屋建築を、実際に上がって体感できる貴重な場所です。
公開にあたっては平成6年(1994年)に改修が行われ、庭もこのときに整えられました。さらに平成19年(2007年)には、玄関まわりや前庭の改修とあわせて、土壁と琉球畳の「間想の間」が新たに加わっています。古い建物を守りながら、少しずつ手を入れて受け継がれてきた家なのです。
斜面に建つ数寄屋「爲春亭」
母屋の爲春亭は、北へ下る急な斜面に建てられています。玄関から入ると1階なのに、奥の部屋からは庭を見下ろすかたちになる、おもしろいつくりです。そのうちのひとつ「浮観の間」は、宙に浮いたように庭を眺められることから名づけられました。邸内で唯一の洋間でもあります。
部屋ごとに天井や窓、欄間の意匠が違うので、ゆっくり見比べてみてください。
- 桜の間:日本画家・田村能里子さんによる天井画と壁画「季の嵐」。天井画は平成8年に公開制作されたものです
- 大桐の間:桐模様の襖と、山並みを彫り出した欄間。市松の窓越しに見る庭は、邸内でも屈指の眺めです
- 太郎庵:浮観の間の横の階段を下りた先にある茶室。江戸時代の名古屋の茶人・高田太郎庵の好みにならったつくりです
- 瓢(ひさご)の間・葵の間:丸い下地窓など、茶屋風の遊び心が見られる部屋
大樹の庭と茶室「知足庵」
爲三郎は大きな木には神さまが宿ると考え、巨木を大切にしていました。庭にはシイやヒノキ、モッコクなどが茂り、街なかにいることを忘れてしまうほど。北向きの傾斜を生かした石組みは、木曽川の名勝・寝覚ノ床に見立てたものだそうです。春の四季桜、秋の紅葉と、季節ごとに表情が変わります。
庭の奥にたたずむ茶室「知足庵」は、犬山にある国宝の茶室「如庵」を手本にしたもの。名前は「足るを知る」という言葉からとられています。如庵の趣向を受け継ぎながらも、床の形などに独自の工夫がこらされています。庭には、長い年月をかけて固まった「さざれ石」や、木が化石になった「珪化木」も置かれているので、探してみてください。
庭を眺めて一服「数寄屋 de Café」
記念館の中には、ミュージアムカフェ「数寄屋 de Café」があります。大きな窓越しに日本庭園を眺めながら、注文を受けてから点てるお抹茶と季節の和菓子などがいただけます。料金は税込1,000円(2026年9月時点)で、記念館の入館券(単館券か共通券)が別に必要です。予約はできないので、時間に余裕をもって出かけましょう。展覧会によっては、太郎庵や知足庵を会場にした期間限定の呈茶が行われることもあります。
訪れる前に知っておきたいこと
- 公開は古川美術館で展覧会が開かれている期間だけです。展示替えの期間は閉館します
- 文化財を守るため、邸内は素足での入館ができません。靴下などを用意していきましょう
- 庭の苔の上は歩かないように気をつけましょう
基本情報
| 名称 | 古川美術館 分館 爲三郎記念館(旧古川爲三郎邸) |
|---|---|
| 住所 | 〒464-0065 名古屋市千種区堀割町1-9(古川美術館から南へ徒歩1分) |
| アクセス | 地下鉄東山線「池下」駅から徒歩約3分/「覚王山」駅1番出口から西へ徒歩約5分(古川美術館経由) |
| 開館時間 | 10:00〜17:00(入館は16:30まで)。数寄屋 de Café も10:00〜17:00 |
| 休み | 月曜日(祝日・振替休日の場合は翌日)、展示替期間、年末年始 |
| 料金 | 入館料は展覧会により異なります(爲三郎記念館のみの単館券と、古川美術館との2館共通券あり)。入館料のご案内をご覧ください/数寄屋 de Café の呈茶は税込1,000円(2026年9月時点。別途入館券が必要) |
| 電話 | 052-763-1991(古川美術館) |
| 公式サイト | 爲三郎記念館|古川美術館 |
